紙芝居

カチカチカチ カチカチカチ

自転車をついて小さいのぼりを立てて来ると
「紙芝居のおじさんが来たー」と子供たちが
自転車の後をついて行く。
それから二銭を持ちお寺の階段で紙芝居が始まるのを待つ。
「飴を買った人は前の方にしゃがんでおくれ」と言いながら
おじさんは一人づつ二本の木の棒の先に飴を丸めてわたす。
子供たちはその飴を両手でグルグル回し始めると
空気が交じってか、だんだん飴色が白くなって行く。
「誰が一番白くなるかなぁ」
一番白くなった子供は飴がもう一本もらえるのである。

ひととおり飴が渡るとおじさんは箱の中から一枚めくる。
そこには鞠(まり)をつく可愛い女の子の絵が書いてある。
そこに恐ろしい顔をした悪い男の人がまりをとりあげ
女の子をさらって逃げて行く。
「だれか助けて~、お父さんお母さん~」
お父さんは追いかけますがどんどん離れて行きます。
「花子や~、だれか助けてください」
その声が聞こえると、人々を助ける鉄仮面が白いマントを
なびかせてあらわれると「まてー」と飛ぶように走る。
そしてその悪者をけちらし、まりと女の子をたすける。
子供たちはにっこり笑うと「やったねぇ」「強いねぇ」と
安心したためいきをつく。

「このつづきは又今度。みんなまたおいで」と
しわがれ声でおじさんは子供たちに声をかけながら
箱をかたずけ自転車に乗せバイバイと手をふり帰って行く。
子供たちも「またきてねー、バイバイ」と飴をなめながら散って行く。
 
純粋な子供たちとこのような商売で満足している大人・・
テレビのない時代のなつかしい光景であった。


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